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笠原町商工会

酒が料理を活かし、料理が酒をすすめる。

みずの てつじ
株式会社三千盛 代表取締役

江戸後期安永年間からおよそ200年、笠原町で酒造りをつづける三千盛。六代目代表の水野さんは、東京農業大学で醸造を学んだ後、家業を継ぎ、30年酒造りに関わってきた。水野鉄治という名前は代々襲名してきたが、六代目の水野さんは生まれた時からこの名前で、家業を継ぐことを決められていた。

水野さんは語りたがりだ。次から次へ話題は尽きない。酒の味覚をつくる旨味の話から、酒の酵母菌、大好きな陶芸の話まで、幅広い知識と教養、豊かな経験で聞く人を飽きさせない。

超辛口で知られる三千盛だが、酒の味は甘い、辛いという単純なものではないという。旨味が加わり、アルコール濃度が加わることにより、味に統一感が生まれる。「ノンアルコールビールなんていうのは、あれはジュースみたいなものですな」と辛口の評価だ。味がまとまっていないという。酒の味は、甘み、酸味、旨味、そしてアルコール濃度でつくられる。日本酒のいいところは、何と言っても旨味である。

料理とどう調和させるか。 三千盛の酒は、一貫して切れのある味わいを探求してきた。食事に合わせることを前提とし、その結果辛口となった。甘い酒では、食事に合わせた時「口の中がもっさりしてしょうがない」。そこで、すっきりと口中をリフレッシュしてくれる酒をつくった。酒で口の中を一度リセットさせることで、料理を最初に食べた時の旨さがよみがえる。食材そのものの旨味や香りを引き立て、酒は革新的旨味だけを残し味を極めた。そして呑み続けることで感じる、深い味わいを大切にしている。旨味と切れ味の両立だ。

もともと技術畑だった水野さんにとって、大変なことは営業や広報だ。消費者の人にどうやって、三千盛の酒の味や、日本酒文化を伝えるのか。「僕が勝手にしゃべったりして喜んでいるけど、なかなか伝わらない」と苦笑いする。相手の話をしっかり聴いて、そのうえで「呑んでみて」と勧める。
先代の頃、作家の永井龍男が三千盛の酒に惚れ、出版界の方々にひろめた。その後、東京の飲食店などでも取り扱うようになったのは、永井龍男のチカラによるところが大きい。

ゆっくり食べて、ゆっくり呑んで。美味しく食べて、美味しく呑んで。「充実した食生活と適正飲酒で、健康で長生きしていただきたい」というのが水野さんの願いだ。ツヤツヤとした水野さんの肌が、豊かな食生活を物語っている。まだまだ先の話になりそうだが、将来は陶芸をしたいという。既に師匠もいて、窯も決めているようだ。今から楽しみである。